熱中症の話

梅雨というに毎日暑いっす!

いま地球温暖化がさかんに叫ばれていますよね。
都市では「ヒートアイランド現象」といって,アスファルトとコンクリートの照り返しや空調による大気への熱排出(エアコン,クーラーは室温を下げた分だけ室外機で外に熱を放出します)によって,緑の多い郊外に比較して2~5℃は気温が高いといわれています。 熱の伝わり方,伝導・輻射・対流・蒸発のうち輻射熱の要因が大きいのでしょう。
環境省は「打ち水」運動とかで気化熱による温度低下でヒートアイランドに対抗しようとしていますが,発生熱量と放熱量のバランスが違いすぎです。

その点,山で熱中症にかかったって話をあまり聞かないのは緑の木陰があるからでしょうね。
森林限界を超えれば十分気温も低下しますし。 
まあ,標高が高くなるに従って増える紫外線の対策は忘れちゃいけませんが・・・
高校登山部3年の夏合宿では,Tシャツにブッシュショーツで行動したもんで,腕も足も真っ赤かに日焼けしてしまい,やたらと消耗した記憶があります。
今でも半袖・半ズボン大好き,万年小学3年生並のとっつあん坊やなワタクシですが,暑くても肌を隠したほうが涼しく,後々トラブルも少ないことを砂漠の民ベトウィンから学びました(ウソウソ→経験デス)
雪山はもちろん,夏山も紫外線は強烈なのでサングラスは忘れずに!


とにかく,熱中症なんて僕らが子供の頃には聞かない単語でした。
実際,かんかん照りの中でさんざん遊んでも平気でしたから,年中一定温度の室温環境に慣らされてしまい,現代の都会生活者は特に自律神経とか副交感神経まで鈍くなっているんじゃないかと思うわけです。
これはあくまで持論なのですがね・・・

以下,少し真面目にレポートです。




暑いときには自律神経を介して末梢血管を拡張させ皮膚に多くの血液を分布させて,外気への「熱伝導」により体温低下を図ります。 ところが,気温・湿度が上昇する真夏は,体温よりも外気温度が高くなります。
気温が高くなる(着ぶくれによる身体周辺温度上昇も含む)と汗をかきます。
汗をたくさんかけば,汗の蒸発によって熱が奪われますから体温が低下します。
汗は乾くことによって気化熱を奪うが,湿度が高く飽和状態だと汗の蒸発も不十分となり,汗が乾かず温度調節が出来なくなる。 汗の元は血液ですから,大量の発汗は体内の水分を失うことになり,失った水分や塩分の補給が行われないと,筋肉のひきつけや失神に至ります。
そして,血流による熱伝導と汗による熱放出のバランスが崩れてしまうと体温が著しく上昇します。
このような症状を「熱中症」といいます。

熱中症とは体内の水分や塩分のバランスが崩れ,また体温の調節機構が破綻するなどの原因で起こり死に至る可能性のある病態です。 予防法を知っていれば防ぐことができるし,応急処置を知っていれば救命も出来ます。 

★熱中症が発生する環境因子(どんなときに?)
気温が高い,湿度が高い
風が弱い,日差しが強い
照り返しが強い,輻射熱が強い
急に暑くなった

★熱中症の危険信号(どうなったら?)
体温が高い
顔や体が赤い,熱い,皮膚が乾いている
ズキンズキンとするめまい,吐き気頭痛
呼びかけに対し,奇妙な返事をする,または反応がない

★応急処置(どうする)
風通しのよい日陰や,クーラーの効いた室内に退避させる
衣服を脱がせて,体からの熱放散を助ける
露出させた皮膚に水をかけて,風を送ることにより体温を下げる
氷があれば,くび,わき,ふとももの付け根に当てて,血液を冷やす
冷たい水やスポーツドリンクを飲ませる*注1
救急隊を要請し,緊急医療機関へ搬送する*注2

*注1
ただし,意識がしっかりしていない状況では,誤って気道に流れ込むことがあるため無理に飲ませるなどは危険
*注2
救急隊を要請した場合でも,いかに早く体温を下げるかということが救命にかかわることを忘れずに!
また,その場に居合わせた人は,発症時の状況や状態などの情報を積極的に提供し,医療機関が即座に適切な治療に移れるようにしましょう。


熱中症の対極は低体温症でしょうか。
山関係で分かりやすいのが凍死,「起きろ!ここで寝たら死ぬぞ~」ってアレです。
極限に寒いときには,自律神経を介して末梢血管を縮小させ血流を落とし無駄な熱放出を抑え,体温維持=生命維持を図ります。 凍傷で手足の指を失うのは,生命維持のため体幹に集まっている重要な器官(内臓)を守ろうと,放熱の多い身体の末端への血流を最小にするように自律神経が機能するからです。

低体温症については,相模勤労者山岳会様で公開されているレポートがありますので参照してください。

熱中症,低体温症とも血流による温度調整の仕組みを理解していれば,予防対策に役立ちますよ~
病状が出てからでは遅いので,自らのケア,子供達のケアを怠りなく!
ヤケドと凍傷は,熱中症と低体温症の両極な状態。 でも,治療方法は変わりますので専門家に任せるのが無難ですね。

とりわけ火遊びには注意しましょ(^_^;)
by eohiuchinada | 2009-06-17 08:44 | テクニカル