コンビニの悲鳴

札幌市の「ごみ有料化」が始まって2ヶ月になりました。
日本の政令指定都市の,18市のうち,既に新潟市,京都市,北九州市,福岡市に続き5番目に実施した札幌市。
仙台市,岡山市が実施検討化に向けて動いているとのこと。
岡山市では「政令指定都市指定の要件が不足しているにも関わらず,指定を受けたいための見返り的に有料化しているのではないか」といった市民の声もあるとか。

他方,メガポリスと称される大都市はどうだろう。
名古屋市や横浜市は「分別」を進めて「リサイクル率」を向上させているようだ。
”役人天国”と揶揄される大阪市は,未だに「黒いごみ袋はアウト!」なんて回覧がビル管理組合から廻ってくる。
リサイクルでは,東海が先進地区といわれ,「沼津方式」なる分別収集方式が1975年から実施されている。

地方分権とか,道州制とかの議論が政権交代後にどう進められるか・・・
国,県,市という縦割り行政の壁は,環境応援団IPPOの方々が現場実地で経験していて,話を聞くだけでもストレスを感じたものだ。

仙台市ごみ分別推進キャラクター「ワケルくん」
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北海道365.comより
札幌市の家庭ごみ有料化から1カ月。ごみの減量を狙い,導入された新ルールによって,排出量は確実に減っているようだが,一方ではコンビニのごみ箱に家庭ごみを持ち込むケースが増加,早くも有料化の影響が出始めている。
南区真駒内地区のセブンーイレブン。 この店ではそれまで月額5万円程度だったごみ処理費用が有料化後,2万円ほどアップした。 生ごみのほかペットボトルなど不燃物の持ち込みも多くなっている。
店主は「指定ごみ袋を買わなければならない上,新ルールのごみの分別はかなり煩雑で若者やお年寄りには理解しにくい。 分別なんか面倒だからコンビニに捨ててしまえ,ということなのでしょう」と原因を分析する。
札幌市の新ルールでは家庭から出たごみは「燃やせるごみ」と「燃やせないごみ」に分け,指定ごみ袋に入れて出さなければならない。 ゴミ袋の価格は5㍑から40㍑まで4種類あり,1㍑当たりの換算では2円の負担になる。
「コンビニに捨てれば,金はかからないし面倒な分別もしなくていい。 何でもかんでもコンビニに任せておけば捨てる方は楽ですからね」。 店主によると,持ち込みの「手口」は,小さなビニール袋に小分けして,複数の店舗のゴミ箱に分散して捨てるケースが多いという。
「捨てるほうも,大量に持ち込むのは気が引けるのではないか。 ちょっと多目のごみはスーパーなど大型店舗のごみ箱に捨てているようですね。 自衛策として店内にごみ箱を移動する店もあるようだが,むしろ,店の外に袋ごとごみを放置する人が増えるだろう。
また,ごみ箱を撤去して客足が遠のくのは困る。 サービスの一環としてごみ箱を引っ込める気はない」と諦め顔だ。
増加する家庭ごみの持ち込みに頭を抱えるコンビニ業者に対し,有料化後の市内ごみステーションでは,ほぼルール通りごみが出され,排出量も減ってきているという。
札幌市環境事業部業務課によると,新ごみルール開始後3週間の状況は,「燃やせるごみ」の指定袋使用率は99%,「燃やせないごみ」は96%と好調。「燃やせるごみ」の排出量も前年度比43%減の1万2052㌧で,有料化による減量効果が現れている。
札幌市で1年間に排出されるごみの総量(事業ごみを含む07年度)は約80万㌧。 処理費用は約200億円(同)に上る。 ごみの有料化で市は,家庭ごみ一人一日645㌘だった排出量を来年度中に500㌘以下に,17年度中に400㌘以下に減量する計画。
しかし,ごみの減量が目標通り達成されたとしても,コンビニなどに持ち込まれるごみが増えるようでは,有料化による不法投棄など新たな懸念も生じかねない。 人口190万人の札幌市はごみ有料化を導入した都市として最大規模。
ごみ有料化に伴い,家庭ごみの持ち込みが増加するならば,コンビニが負担する処理費用は膨らむ一方だ



ごみの有料化の反対意見として「有料化すれば不法投棄者が増える」という理論がある。
2001年の9.11同時多発テロ以降,国内でも急速に街の中から「ごみ箱」が消えたように思う。
街中の公園など公共施設のごみ箱は,ほぼゼロに近いのではないだろうか。
昨日まであった灰皿が無くなった途端,その周辺のポイ捨てタバコが目立つようになる。
人間という生き物の習性は面白いもので,我が家の最寄駅では改札口から「タバコに火をつけた」と仮定して,ちょうどいい頃具合に「タバコを吸い終える」距離周辺の道端にポイ捨てが目立つ。
電車では吸えない,ウチに帰っても娘が嫌がる。 そんなサラリーマンは,改札から徒歩で2~3分の半径でポイ捨てを敢行する(モチロン捨てない人のほうが多い)行動パターンであるようです。

そして,私企業であるコンビニへのごみ投棄。
阪神淡路大震災の経験から,コンビニが地域住民へ寄与する影響力は大きい。
変な話,郵政民営化で縮小された特定郵便局なんかより市民は必要と思うだろう。
実際,島根県とかのニュースで,売上が芳しくないから24時間営業を止めて午後10時に閉店するというコンビニは,塾に通う子供の「安心ステーション」だったのに,10時以降真っ暗になる夜道が心配だ・・といった母親の嘆きもあった。

高速道路を無料化するとマニュフェストに掲げた民主党。
コンビニ同様,高速道路SAのごみ箱も家庭ごみの持ち込みが問題になっている。
国の近代化を目指して,保健衛生の関係からごみ処理を公共事業とした我が国であるが,経済至上主義の歪みがこんなところにも出てきている。

「戦後は終わり」「消費は美徳」と教えられた戦後派の年配者に「ごみは自治体の担当者がタダで処理するもの」と未だに思いこんでいる人々が多いのではないだろうか。 町中を掃除して歩く市役所職員などいないにも関わらず,「こっちは税金を払っているんだ!」と・・・ そんな両親や,おじいちゃん,おばあちゃんが取る行動を見て子供や孫は育つ。
ごみはどこかよそに捨てればいいと学習した子供が大人になって,年老いた身内の面倒を見るのだろうか?
一度習慣づけされた行動は,意識を変えるために相当な努力が必要だ。

ご存じの通り,コンビニから出るごみは「事業系ごみ」である。
ごみの中身がどうであろうと,営利目的に事業を行う事業者が排出するごみは事業系ごみとして,自治体の有料・無料に関係なく自らがごみ処理業者と契約して処理しなければならない。
買い物に来て釣り銭の小銭を「○○募金」に入れる心を持つ人が,自宅で出たごみを同じコンビニのごみ箱にこそこそと捨てる姿は見たくないものだ。
人が見ていない行動にこそ,責任と誇りを持ち続けていたいと思う。
by eohiuchinada | 2009-09-04 12:00 | 日々のこと