保護と駆除

聞くところによると,新潟県のローカルTVでは佐渡の保護センターから放鳥されたトキ(学名:Nipponia nippon)を追っかけるコーナーがあって,今日のトキはどこそこに居ますみたいな情報で番組が成立しているという。
ある日の放送は,佐渡から婿捜しの旅に出た雌のトキが富山県黒部市に飛来し,定住を願う市民の声から行政当局が彼女に「特別住民票」を発行したとか・・・

既に,純国産のトキは,キンと名付けられた雌が2003年に死亡して一度絶滅している。
ワタシ自身,このトキをお目に掛かったことはないのであるが,トキ色の語源ともなった翼下面の淡い朱色は飛翔している姿を地上から見上げる時がことのほか美しいらしい。
この美しい羽根を目的にした乱獲で激減したことに加えて,列島改造論の号令のもと農地減反や化学肥料による餌の減少と直接的な化学汚染がとどめを指したというのが一般論である。
列島改造を旗印にして総理大臣になったあの方のお膝元が絶滅の地というのも皮肉なものだ。

ところがこのトキという鳥,19世紀以前はハトやカラス並みに生息していたらしく,江戸時代には田んぼを荒らす害鳥として駆除をしていたこともあったのだとか。
国を挙げての保護活動に異論を唱える気などさらさらないが,人間の勝手都合で駆除されたり保護されたり。
いやはや物言わぬ動物にしてみればたまったものではないだろう。

現在ニホンでは,基本的に野生動物は鳥獣保護法というものに守られている。
ところが人間の生活に対し,生命的,経済的に害を及ぼすものを有害鳥獣といっており,鳥獣本来の食性によって,人,家畜,農作物,樹林,農林水産物等を食害を為すものを「有害鳥獣」として自治法のもと人間の判断で駆除の対象になっているのです。 *有害鳥獣に法的な規定,根拠はなく「魔女裁判」的側面を持つ
なんという矛盾でしょう。

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たまたま本日の出張先で見掛けた看板なんだけど,サギとかが駆除対象になってるのには驚いたよ。


数年前から田畑を組織的に荒らす農作物ドロボウが増えているけど,悪党は捕まってもさすがに駆除はされないよね。
人の生活と自然の関わり,せつねぇ問題だな~
by eohiuchinada | 2009-06-26 23:17 | 日々のこと