ダウンジャケットの変遷

関西でもコート姿やカジュアルのダウンジャケット姿が増えましたね。
ここ数年の傾向として,山岳系ダウンジャケットはアウターからミッドレイヤーへ定着したように思います。

あれは70年代だったでしょうか。
アメリカ発のアウトドアブームの代表としてマウンテンパーカーやダウンジャケットといった「新しい服」が日本に上陸し,当時一着10万円近くもするようなモノがあったりしました。 今の貨幣価値に直すとどのくらいでしょうね?
もちろんビンボーな若者だったワタシには手が届くわけもなく・・・
昔話を始めると長くなるのでやめときましょう。

70S当時を代表するクラッシックスタイルなダウンジャケット。→今は弟が使ってくれてます^^
CAMP7
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レイヤードシステムなるものを体系化したのがパタゴニア社。
そのパタゴニアは「フリース」で一時代を築き上げたため,保温インサレーションといえば化繊綿がメインだったが,ここ数年はダウンジャケットを展開している。
ダウンジャケットは表と裏の生地を直接縫いつけてダウンを詰めるチューブを作る簡単な「つぶし縫い」と,隔壁を作る「ボックス縫い」構造に分かれる。
前者は軽量コンパクトだが縫い目からのヒートロスが大きい。よって,中間着で使うのが良い。
後者は重く嵩張るが抜群の保温力があり,海外や極地遠征などプロ仕様の表生地と併せてアウターに使える。
とまあ,簡単にはこんな感じ。

ひと頃,ノースフェースの「ヌプシ」というモデルが流行り,猫も杓子もこのダウンジャケットを着ていたが,これは中間着にするには嵩張りすぎ,アウターにするにはヒートロスが大きいという中途半端なモノだったな。
まだギリギリ,ラインナップからは外れていないので,このページを読んでるヒトは間違っても買わないように(笑)
THE NORTH FACE Nuptse Jacket
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ま,70年代にダウンジャケットが大ブレイク(死語)した時には,真冬でもTシャツ一枚の上から羽織ってダイジョウブみたいなコピーで,街中で暖かい店に入るなり「暑い,暑い」と言いながらこれ見よがしにTシャツを見せダウンジャケットをアピールしていた時代のヒトなので偉そうなことはいえないが・・・

今ではしっかり知恵が付き,モコモコのダウンジャケットを一張羅で着ることはないし,第一そんな製品も少なくなってきている。 なんの皮肉か,長らくダウンには手を出していなかったパタゴニア社から「ダウン・セーター」という中間着に特化したコンパクトな製品を発表して売れ筋になって以降,各社ともダウンチューブとなるキルトピッチが細いつぶし縫いの製品が主流になっているように思う。
あと,フーディニ(フード一体型)モデルが増えているのも近年の傾向でしょうか。
今年の各社モデル
上左:Marmot(マーモット) 900PREMIUM DOWN JACKET *電子カタログ参照
上右:OR(アウトドアリサーチ) Transcendent Sweater
下左:cloudveil(クラウドベイル) Inversion JACKET
下右:Mammut(マムート) Gravity Hooded Down Jacket
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羽毛布団も昔は高価でしたが,需要と供給の関係か,ダウン製品の値段も安くなりましたね。
一般に北欧産の体長が大きなガチョウ羽毛(ダウンボールが大きい)が最高級品とされ,ハンガリー,ポーランドあたりのハンドピック(手摘み)されたホワイトマザーグースダウンをピンとするなら,中国産のダック(アヒル)ダウンがキリって感じでしょうか←たとえ話です。 寒冷地の水鳥は羽毛が発達しているのでモノがいいというのが定説デス。
ダウンの物理的性能に関しては,FP(フィルパワー)というアメリカの規格が世界標準の物差しになっています。
これは,一定の温度と湿度条件下で1インチのダウンが何立方インチに膨らむかというダウンの復元力を測った単位で,数値が大きいほど復元力が高く,断熱材としての空気を溜め込む許容量が大きいため高級とされます。
ダウンジャケットの袖口や,肩あたりに「800FP」とか刺繍があるのがソレで,ピンなら900FP,キリが600FPくらいか・・・一般には750FP以上が高級と呼ばれているようです。
というか,フェザーなんかの混入率が高い安物はFP表示をしませんから,500台以下でそんな刺繍を誇らしげにしている製品は見たことがありません。 山道具では,800とか850FPあたりが多いように思います。
→EO個人見解としてはこのFP表示も?と思う製品が,ままあるが。。。

あと,忘れてならないのがシェル素材です。
ダウンジャケットといえば,ナイロンリップストップなど目が詰んで強度の高い素材が多いですよね。
これは羽毛の抜けを防ぐと共に,シェルを引っ掛けて破いたりすると,そこからダウンが抜けてしまいぺっしゃんこになってしまうことを防止するためで,格子状の補強糸が入ったリップストップ素材は欠かせませんでした。 最近は薄く軽量で丈夫なナイロン・ポリエステル繊維が開発され,撥水性能の良いDWR加工が施された製品も出回っています。
このような観点から,ダウンジャケット(セーター)は寝袋を作っているメーカーの製品が,薄く軽くて強いシェル素材使いに一日の長があるとワタシは睨んでいて,事実,名品も多いです。

Western Mountaineering Hooded Flash Jacket
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着心地・・こればっかりは言葉で伝えきれませんが,ここ最近ではこのジャケットが質・使い勝手とも最高ではないかと思うEOでした。自工場生産のプライド(寝袋はUSA madeですがアパレルの一部はCANADA生産になります)
いまや数少ないMade in USA にこだわるメーカーで,FP表示は850PLUSとしている。
この+プラスのアドバンテージが凄いなと思うのが,手持ちの寝袋で,ダウン量(詰め物)はほぼ同じな900FPのTNF社と850+FPのWM社を比べるとWM社のが暖かいように感じるところです。

ここで大事なのは,羽毛量=暖かさではなく,他の化学綿にしても,空気を溜め込むスペースが沢山あり,その復元力とのバランスでベストな量が入っているモノが良い製品ってことでしょうか。 羽毛がパンパンに詰まっていても中のダウンが拡がりきっていなければ意外に暖かくないし,重いってことですね。
経験的に,薄いペラペラの「大丈夫か?」と思うくらいのダウンジャケットの上に風を止めるナイロン一枚を羽織るのが一番軽くて暖かいと思いますよ~ 肩も凝らないですしね。
アウトドアではダウン唯一の弱点,濡れ対策として防水透過性のハードシェルを引っかけるといいでしょう。
というわけで,「ダウンは中に着ろ!」を,ここに提言します(^_^)b

最後に紹介したWM社のダウン製品,体感が違うってところが定性的な曖昧表現で申し訳なく思いますが,生地や縫製にもプライスレスなクオリティ。 なによりも自社製品に対する愛情を感じる逸品です。
縫い目のところから羽毛が抜け出るようなモノは,あんまり良くないですよ~ ショップでじっくり見比べてください。
by eohiuchinada | 2009-12-11 08:55 | 道具