2010年5月6日 五助山その2

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昨日に続きます。

まず最初に「五助山」という検索キーワードで拙ブログに辿り着かれた方へ・・・
以下ルートは,2004年4月・5月と立て続けに道迷い遭難が発生したため,山頂側分岐点になる六甲ガーデンテラスからの山頂遊歩道(六甲全山縦走路)に「左への道は熟練者向きコースです。迷いやすく危険です」と書かれた標柱が立てられたルートであり,国土地理院発行の地形図にも,昭文社発行の「山と高原地図 六甲・摩耶」地形図にもコース記載がありません。
五助山には国土交通省管理の四等三角点(点名:五介山)がありますので,一般的ではないにせよ明瞭なトレースがあります・・・が,記憶に新しいところでは2007年秋にも道迷い遭難が発生しています。 遭難者は日帰りハイキングで入山,山頂付近で友人と別れ単独で本コースを下山中道に迷い,入山から8日ぶりに自力で下山して住吉霊園で発見・救助された。 このような事例から六甲山系における「道迷いの代表的コース」として,「重大事故頻発の西山谷」とともに”山と渓谷(2008年2月号)”で特集掲載されたコースであることを了解願いたい。
当blog管理者は,行き先・コース(エスケープルート含む),タイムスケジュールなどを記したメモ書きを家人に渡し説明してから入山したことを付け加え,今回のコース紹介は地図遊びが好きな出戻りハイカーの備忘録として閲覧していただければ感謝。




さて,昨日の続きになります。
五助ダム(砂防堤)の巻き道を越えると,平らな湿地帯が目の前に拡がります。
鋼管パイプで杭打ちされた木道を渡るとすぐに4mほどの長さの木道残骸があります。
この数m先に,五助山へと向かう取り付きの渡河点があり慎重に見ればなんらかのマーキングがあるはず。
連日の晴天続きであったため水量は少なく,飛び石を伝って靴を濡らすこともなく渡渉できました。

取り付き点
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徒渉後すぐに「土砂崩壊防備保安林」の看板に出くわします。
看板にはマジック書きで ←五助谷,↑五助山 と書かれています。
見逃して谷側へ直進しないよう看板の手前を右折し,尾根ルートに取りつきます。
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*五助谷は前述の遭難者が迷い込んだ谷。 次に紹介する痩せ尾根に出会わない時は速やかに引き返しましょう

ちょいと藪に隠れた取っつきですが,ほどなく両側が10m以上切れ落ちた痩せ尾根に出ます。
たいした距離ではありません・・バランスを取り慎重に通過します。
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この入口で間違わなければ地形図で見える五助尾根に乗ったことになります。
この尾根は神戸市灘区と東灘区の区境でもあり,はっきりした踏み跡には区境界を示す赤い頭の杭が一定間隔で出現します。
「尾根を歩く」感覚に注意して,テープや立木にスプレーされたマーキングに惑わされないよう主稜線を登ります。

Top画は,このあたりの尾根道とコンパスを合わせて歩く・・の図。
結構な急坂を真北から北北西に向かってえっさかほいさか高度を稼ぎます。
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五助山山頂直下で十字に交差した踏み跡がありますが,登りで通過する場合は迷うことはないと思います。
それにしても,うっとおしいくらいスプレーのマーキングが立木に・・・ 
付けた本人は親切心のつもりでしょうが,明瞭なルート上のそこかしこにスプレーする行為は如何なものか。
犬のマーキング行動と同レベルの行儀の無さ。 またスプレー色も複数ある点,理解に苦しみます。
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谷から吹き上げる心地よい風に助けられ,取り付きから30分ほどで四等三角点が設置された五助山山頂に到着。
東側が崖になっていて,先週Taku兄と歩いた荒地山方面の展望が拡がります。
本日は,こちらで昼食としました。
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風情があっていい三角点だなぁ~と思ったら,ここにも信じがたい悪戯が・・・
いまどき小学生でも分別がつくだろうに。
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山頂を後に,本日の核心部へ突入。
前述「山と渓谷(2008年2月号)」「六甲山に隠れた落とし穴」の記事を執筆された加藤芳樹氏の山行でも,2箇所の道迷いポイントが出現するのがここから六甲全山縦走路までの間。 高度差は残り200mほどだが,距離的には取り付きから五助山山頂までの距離よりも若干長い尾根歩きとなります。

尾根を外さないよう登ります
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で,出現した第1の道迷いポイント
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この↑写真では,通過したあと振り返って撮影したものです。
ルートは左側の斜面からトラバースしつつ登って来るが,ふと見れば尾根筋にも踏み跡がある。
下りの際には真っ直ぐ進んでしまいそうな分岐でした。
ここにも至るところにマーキングがあり,付けた本人でない限り意図は読めない。
地形図に怪しいポイントとしてメモを書き込んだ。


更に進むと第2の道迷いポイント
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この↑写真は,登り方向で迷いそうなので登りの進行方向に向かって撮影したものです。
無意識にルートを辿ってくると,横たわる倒木をよけるように右側の踏み跡に進んでしまう確立大!
ここは倒木を乗り越えて北西方向に進んで正解。
この分岐点から先を見ると,いったん下降した先に登り返しの笹道が見えます。
地形図でも尾根が西寄りに屈折する転換点なので,倒木を見落とさないように慎重に歩きましょう。
右は水晶谷へ落ちて消える支尾根。
私が偵察した限り踏み跡も明瞭に付いていたので本ルート中一番注意を要する分岐点になります。

この先は向かって左手に展望が開けると,電波塔が目標物として見えてきます。
雨天や霧の日以外は鉄塔や電波塔は方向を定める目標としたい。
小ピーク毎に岩稜帯が出現し,足下に注意しながら高度を詰めて行きます。


東の天狗岩
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↑ 大きな岩がゴロゴロとした急斜面の最後に表われる巨岩。
ガーデンテラスの西に「天狗岩」と呼ばれる巨岩があるが,ここは西の天狗岩に対面する東の天狗岩。
ここを通過すると稜線の合流までは,ほんの一息。
開けてきた笹道を上り詰めると,山頂主稜線の縦走路に飛び出します。
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↑ この写真がくだんの警告が書かれた標柱。
後ほど紹介するが,急遽立てられた標柱であることがわかる。


この時点で時間は14:30,昼食休憩と写真撮影,ルート確認を含めて取り付きから2時間の行程。
大陸から朝鮮半島を西に進む低気圧に入る南風に乗り雲が増えてきた。
天気の崩れは明日以降,十分陽も高いので予定通り極楽茶屋跡から有馬へ紅葉谷を下る。

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タチツボスミレ
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五助尾根でも沢山あったが紅葉谷もツバキの落花が目立ちます。
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表の熟練者コースに続き,裏六甲の熟練者コース,百間滝を覗いて白石谷へ向かう。
分岐の標柱
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東西50kmにまたがる六甲山系には,2004年「119番つうほうプレート」と書かれた救急車イラスト付きの黄色いプレートが設置されました。 各プレートには,ポイントを示すひらがなと数字を組み合わせた番号が振ってあり,山中で事故や遭難に遭った場合はその番号を通報すれば神戸市消防局のレスキュー隊が駆けつける仕組みになっている。
神戸市内の山域に限られているが,全87コース,806箇所の通報ポイントがあるそうだ。

分岐からは自然と小走りになってしまう傾斜のつづれ道を急降下。
ほどなく百間滝の落口を過ぎ,さらに下って滝壺を撮影してみました。
この滝,百間(180㍍)とはいいませんが落差50㍍くらいでしょうか(笑)
厳冬期には全面氷結する年もあるみたいですが,ここ数年は出現していないみたいです。
有馬四十七滝の代表選手・・・立体感のないノッペリ写真で申し訳ございません(^_^;)
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V字谷を足下に注意しながら下降すると,典型的なゴルジュ地形,「屏風岩」に出くわします。
ここは滑りやすい岩場を巻いて傾斜面のトラバースを慎重に下りましょう。
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屏風岩を通過すると,白石谷と出会い砂防堤上流側の開けた砂礫地のルートを拾います。
砂防堤をひとつ越えて,太陽と緑の道(紅葉谷ルート)に合流。
ここでも意味不明のスプレーマーキング(去年まで無かった)。
マルとかバツとか,スプレーした人間の主観でしかないので第三者には全く意味不明なのだ!
何はともあれ有馬温泉もあと少し
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ロープウエイ「有馬温泉駅」16:00到着
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本日歩いた五助山(五助尾根),白石谷などの熟練者コースは行政でも正規ルートとして認めていないハイク道。
このため通報ポイントはおろか,標柱や指導標も設置されておらずワタシのように好奇心が行動原理の歩き屋天国。
実際,GW終盤,休日の谷間な平日だったこともあってか五助ダムから有馬まで誰一人ともすれ違うことがなく,六甲の山歩きでは滅多にない静かなハイクアップが出来ました。 しかし,これを反面として見るならば,例えば足をくじくとか骨折するような転倒事故をした場合,人が入らないルートを歩いているというリスクは山ヤの不文律,「自己責任」ということを念頭に置かなければならないと言える。

今日も紅葉谷をプラプラ下りながら,もし,日本三古湯の「有馬温泉」が無く,太閤秀吉が大阪を拓くことがなければ神戸から有馬への街道は開くことがなかっただろうなと思いを巡らせる。 港町神戸と有馬温泉を分かつ六甲山系は,人々に歩かれることを必然としたかのように市街地からすぐにアプローチ出来,国立公園として保護される関西の山ノボラーにとって最高の遊び場だ。
昨今のアウトドアブームで,お洒落なウエアを身にまとった若い人もハイクアップの度に見掛けることが多くなり,嬉しい反面,先のマーキングのように我が物顔にルートを荒らす輩が増えてきているのも事実・・・他の山に比べて圧倒的に入山者が多いことを考えれば,ルート下見であったとしても後に回収する気配りが欲しいところだ。
真新しいテープなどは外すに外せないし,スプレーペンキなどは論外である。
かく言う私も100点満点のハイカーかと問われれば,地形図片手に危なっかしいルートを歩く変人(笑)
ここは我がふりも見直す気概でもって年齢に見合ったハイキングを楽しんで行きたいと思っている。

何度も繰り返しになるが,地形図にコンパスはおろかガイドブックも持たずに指導標頼りのハイクをされる方は,関西で最も山岳事故の多いのは六甲山であるということを忘れないでいただきたい。 道迷いの多くは目の前にある海に向かって流れる川沿いを下れば神戸市街に出られるだろうという思い込みがイケナイのだと思う。

山登りのバリエーションとして「沢ヤ(海外で言うところのキャニオリング)」と呼ばれ,夏場,水しぶきを浴びながら沢を登る形態がある。 滝イコール絶壁ゆえ,ロッククライミングの要素が多分に含まれ,垂直系からその道を辿るパターンが多いようだ。
六甲山系でも一般のハイキングルートに飽きたらず,沢・谷専門みたいなヒトもいらっしゃるが,メインは遡行であって,下降するするヒトはいない。 ヨーロッパアルプスやヒマラヤ・ジャイアンツのバリエーションルートでも,厳しい登りのあとは一般ルートを下るのが山のセオリー。
海岸線から僅か数kmで千m近い標高がある六甲山は谷も深く,迷った挙げ句の転落事故も多いと聞く。
下りは確かに楽だけど,谷に入れば携帯電話の電波が届かないことも理解しておきたい。

六甲山には(無粋ではあるが)山頂に「サンライズドライブウエイ」という車道があることも考えあわせれば,もし万が一山中で迷った場合,危険な谷を下るよりも尾根へ向かって登り返すほうがより安全で救助される確立も高くなるだろう。
神戸市消防局の救助ヘリはポートアイランドに基地があり,日中で天候に問題がなければ救助通報が有り次第,出動に約5分,ポートアイランドから飛び立ち5~10分で六甲山全域をカバーする態勢にあるという。 神戸市では事故や遭難の多いルートを「熟練者向き」と表示して予防線を張っている。 「自分は大丈夫」などとタカをくくるより,もし万が一のことを想定して,レスキュー情報などちょっとした防災知識を持っていればその意識が自分自身の命を守る一番の予防線になるのかも知れない。

グダグダと書き連ねてしまった。
オサレな山装備を買い揃える前にコンパスとヘッドランプは最低限の基本装備として先ず買って欲しい。
シルバやスントのコンパスを買えば使い方も紹介されていて,興味も湧くだろう。
因みにワタシはコンパスを4個くらいに同じくらいのヒカリモノも持っていて,ビジネスバッグにまで常備している。
ヘッドランプについてはいつなんどき災害に遭遇するかも知れないし,出張先で道路標識とにらめっこするときコンパスがあるとなにかと便利なのだ。
最後にカミングアウトするならば,方向音痴の傾向がワタシにはあるようだ(笑)

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by eohiuchinada | 2010-05-07 12:40 | ハイキング